イースター島の魅力はたくさんあったが、一番わたしを魅了したのはやはりモアイだった。
なんのオチもない話ではある。けれど、日本にいた時は不思議な形をしたただの像としてのモアイだったが、実際目にするとそのモアイには想像にも及ばないほど多くの背景があったからだ。
わたしが一番はじめに目にしたのは、ハンガロア村お気にいりスポット近くにあるモアイだった。あまりにも当たり前にあるモアイに“これって本物?レプリカかな?”と、思わず尋ねてしまったのも今では良い思い出だ。そのくらい島中あちこちにモアイはいた。これはガイドブックを見ているだけでは、旅の情報を調べているだけでは意外と気が付かない。それほどモアイというものを特別なものと考えていたのかもしれない。
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そんなモアイで一番ショック(!?)だったことと言えば真横で写真を撮れなかったことだ。いきなり何の話かと思われるかもしれないが、わたしがイースター島へ行ってしたかったことの一つがモアイとツーショット写真を撮ることだった。モアイの真横に立って二人で…というシーンを撮るつもりだったのに残念ながら撮れなかった。と言うのも、よく考えれば当然の話だが、モアイは人に荒らされないようしっかりロープで囲まれている。よって、近付こうにも近くまでしか行けないようになっているのだ。離れたところではもちろん一緒に写真を撮れるのだが、真横で一緒に撮ることを夢見ていたわたしは初日からその夢が断たれてしまいとてもショックだった。モアイを守るためには仕方がないとは言え、今思っても残念で仕方がない。
ただ、そんな自分の夢なんて語っているのがあほらしくなるほど真剣に考えさせられる場所もイースター島にはある。それはモアイ倒し戦争の痕跡が多く残っているアフ・アカハンガで、今でも多くのモアイが倒れたまま残っているからだ。説明をされなければ、ただ岩がゴロゴロしているようにしか見えない。それほど多くのモアイが倒れていたり、粉々になっている。崩れているものも多く、実際わかって写真を撮っていても、後々見ると岩にしか見えない。とてもショッキングな光景は当時の戦いの大きさを物語っていた。
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実際現在は立っているモアイも、もともとは過去の戦争や自然災害で倒されたものも多かったらしい。特にびっくりしたのは、アフ・トンガリキのモアイの復興には日本も携わっていたということだった。こんなに遠く離れた場所で日本の名前を聞いたときには感慨深いものがあった。
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そんなアフ・トンガリキには海をバックに15体のモアイが並んでおり、圧巻の一言だった。旅一番と言っても過言ではないほど素晴らしい景色だった。知らない人も多いと思うが、モアイはすべて島内を向いている。なんとなくイメージ的に海を見ているモアイを連想するが、実際は島を見守っているそうだ。海に囲まれ風も強いイースター島でこの景色を見ていると、モアイが島を向いている理由がなんとなくわかった気がした。
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イースター島初日、思ったよりも観光地だったことにショックを受けたわたしだったが、アフ・トンガリキをはじめとする大きく壮大な景色を見ているうちにこれがわたしの見たかった景色だとわかった。こんな小さな島の中にも大草原があり、そこを馬に乗った人が走っている。モアイを製造していたとされるラノ・ララクでたくさんのモアイを見ながら、遠くにそんな人の姿を見ると、昔にタイムスリップしたような感覚になった。今でも多くの馬や牛が放されていたが、その光景がなんとなく原風景のように感じられた。
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アフ・アカハンガとまた違った衝撃を受けたのはそんなラノ・ララクだった。切りとられかけているモアイや顔だけ出ているモアイ、おしりを見せて座っているモアイもいた。ここには何百体ものモアイがいたが、こうしてみれば見るほどモアイの魅力に惹かれていった。
一方どうやって作ったのだろうという疑問はここに来ると解けてしまう。ホテルの方から製造工場に行けるよと英語で言われたときは意味が分からなかったが、ここに来てなるほどと理解した。
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何体見たかもはやわからなくなるほど島中にあるモアイ。モアイなくしてこの島はないと思ったと同時にあんな遠い場所にいるモアイに会いたくなる理由がわかった気がした。