久しぶりに、雪の中でカヌーをしたいな。

そう思ったのはちょうど昨年の3月。
もう何年になるだろう。
釧路で初めてカヌーをした。
マイナスになるような厳寒の時期。寒いというよりも痛いというのが正しい感覚。
手先足先の感覚もなくなる中、はじめてカヌーをした。
しんしんと雪が降る中、初めて結晶を見た。理科の教科書で見たことはあったけれど、
肉眼であんなにはっきりと見えるなんて知らなかった。
まるで童話の世界のような静けさの中、タンチョウの家族が目の前を横切る。
夢じゃないかと思った瞬間、「しぃー。」とガイドさんに音を出さないよう合図をされた。
そのまま湿原のほうへ消えていったタンチョウたちは写真がなければ幻だったと思うほど、本当に静かに去っていった。
あれほどの寒さを経験しても、人間というのはどうしても忘れられない景色に出会うと
もう一度それに出会いたくなるらしい。
3月、久しぶりに道東に行ける機会が巡ってきたとき、春になる前の北海道に行きたいと自然に気持ちが湧いてきた。
北海道の冬は長いが3月はだいぶ終盤だ。

もうすぐ春がやってくる。
少し寒さが緩み、また少し寒くなる。
寒の戻りは大阪とは比べ物にならないくらい激しい。
そんな寒さを乗り越えて温かな春を迎える。
その前に見ておきたい。思った瞬間、行かずにはいられなくなった。
2月の冬と3月の冬。
同じ冬でも全然違う。
これほどまでに違う季節に行きたくなるのは、時期が少し違うだけで景色というのが全く別のものになるのを知っているからだ。
雪が解け始め土が見え始める。
晩冬の景色はわたしたちにどんな希望を見せてくれるのだろう。

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