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執筆者の写真Ayako

わたしはわたし。


たまに生き急いでいるように感じることがある。人生まだ長いはずなのに、明日したらいいことも、今日しなきゃ!!みたいな、そんな感じになる。

ここに行きたい、あそこにも行きたい。

これもしたいあれもしたい。

旅好きのわたしは“今行かなきゃ風景が変わってしまう!!この建物だって中に入れなくなるかもしれない!”

そんな、もう何年も耳にする半ば噂のようなことを信じて、どんどんどんどん時間が経つことを恐れてしまうのだ。 そしてもちろん、そんな風に思っているから、できるだけ嫌なことに時間は費やしたくない。

昔から時間に対して何かしら感じていることがあるのだろう。例えば今勤めている会社までドアtoドアで1時間半かかるとすると、その間に何ができるだろうとか。今この瞬間、選んでいる感情も行動もすべてが最終的にはいろんなことに繋がるんだ!

なんて、、、

多分人が聞いたら、“そんなこと毎日考えてるの?”と思われるような事をわたしは毎日考えている。 ずっとそうしてきたから違和感はなかった。けれど最近は自分自身に改めて問うようになった。こんな風に一個一個、わざわざ拾うように全てのことを考える自分に、

“その時間の使い方はどうなの?努力の方向、間違っていない?”

そんな風に苦言を呈している気分になったのだ。 そして、そんな風に思っていると、周りからも急いでいるよう見えると言われた。自分から見た自分と、人から見た自分は微妙にずれていることがある。けれど、そう言われた途端“そう見えるんだな”と、ふとなぜか腑に落ちた気がする。自分がそう感じた時点ではなんとなくだったものが、人から言われると実感に変わるのだ。


誰もがみんな何かしら大切なものがあると思う。その順番はあまり意識していないかもしれない。というより、そんな大切なものの順番なんて本当はわざわざ付けなくてもいいのだろう。けれど、そうやって優先順位をつけたり、わざわざ断捨離して好きなものはこれだと見つめ直したり。プライベートも仕事もスケジューリングしなきゃいけないほど、現代人は忙しい。

とりわけネットで毎日見ている情報はどんどん流れていく。SNSだってネットのニュースだって少し見ない間にあっという間に情報は更新されていく。本が好きな理由は普遍的な心理が書かれている(もちろん、違う本もあるだろうけれど)ように感じるし、長く続いている人間の営みみたいなものが感じられるからだと思う。SNSでぱぱっと見られる短文では表せない、自分が最も心の奥底で感じている気持ちを代弁してくれているように感じるからかもしれない。

それが現代文学であれ近代文学であれ、日本の作家であれ海外の作家であれ、時間や世界を越えて感じられるのだから、やはり人間の持つ心理というものはすごいと思う。

“昔の人も同じことを考えていたんだな。”

そんな風に知るだけで安心したりもする。作家が持つ独特な視点から、人間が本来持つ魂の叫びのような、そんな風に感じることさえあった。


今回の旅のお供「あなたを選んでくれるもの」は、帰国後もすぐ読み返した。いつもだったらどんなに面白かった本でも本棚に直行だけど、どうしてだか読まずにはいられなかった。とても大切なことが書かれている気がして。取りこぼしていないか心配になってしまって。

旅の時はいろんな感情が一度フラットになる瞬間がある。それまで自分の中で泥のように沈んでいたものが一気に浮き上がるような。それがねちっとしているとなかなか取れないけれど、幸いだいたいふっと力が抜ける瞬間があって、今回は本を読みながら余計にそんなことを思った。

昔、母に言われたように、うちはうち、よそはよそと、生きていく上で「わたしはわたし」と言い切れたらいいけれど、どうしてだか不安になることがある。よく、ユニークだねとか変わってるねと言われるたびに、最高の褒め言葉だと喜んでいる反面、なぜだかとても恐ろしくなる瞬間がある。それは人と関わない社会なんてないし、毎日人の日常が垣間見える世界だからだろう。


「もしかしたらわたしは、自分の感覚や想像力のおよぶ範囲が、世界の中のもう一つの世界、つまりインターネットによって知らず知らず狭められていくのを恐れていたのかもしれない。ネットの外にある物事は自分から遠くなり、かわりにネットの中のものすべてが痛いくらいに存在感を放っていた。顔も名前も知らない人たちのブログは毎日読まずにいられないのに、すぐ近くにいる、でもネット上にいない人たちは、立体感を失って、ペラペラのマンガみたいな存在になりかけていた。」

***1「あなたを選んでくれるもの」ミランダ・ジュライ著 新潮クレスト・ブックスより引用

自分が思っていることをまるまる代弁してくれるなんて、そうあることじゃない。旅行中はいつもより感度が高くなるから多感だったこともあるかもしれない。ムイネーまでの5時間で読むには足りないほど、深く深く入り込んでしまった。

人の価値観ってなんだろう?

好きってなんだろう?

大切なものってなんだろう?

自分ってなんだろう?

大切な友達、家族。

ずっと付き合いのある人たち。

今いる自分の立ち位置で知り合える人。

インターネット上で関わり合える人。

それ以外の人は?

自分が生き急いでいるように感じるのは、

“夢や希望があるからじゃない?”とブログの読者の方から言われた。

腑に落ちたと同時に、それならばとことんそこと向き合ってみようじゃないかとも思った。


結局はどんな時であれ“わたしはわたし”で歩んでいくしかない。

ホーチミンからムイネーへの、想像もしなかった穏やかな草原を見ながらそんな風に思った。


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