「条件付き運航です。」
そんなアナウンスが流れた関空発釧路行きのピーチは案外あっさりと予定通り釧路空港に到着した。
濃い霧に薄暗い空。
まるで冬に戻った寒い空気に北海道に来たんだと実感した。
3月に来たときは耳が痛くなるような寒さで今回の旅はもちろんそんな寒さではないけれど、真夏の大阪から来た私は長袖を着ているとは言え少しばかり震えてしまった。
雨こそ降らないものの、空は未だにどんよりとしている。
アクティブに行動するのではなく、ゆっくりしなさいってことかな…
そんな風に思いながら前々から調べていたカフェへ行き、毎度立ち寄りたくなる摩周温泉道の駅へ行った。
車であったまったとは言え、車外に出た途端体は一気に冷えはじめる。
申し込んでいた星空ツアーは晴れる見込みがないためキャンセル。
連絡を受け取ったとき、今日はもう晴れないのか、と思うと残念な気持ちになったと同時に、ホテルの温泉でゆっくりしようという気持ちになった。
20代、ほとんどをバックパックで旅した。
宿泊するのは安いビジネスホテルか民宿。民宿に連泊してもいいのだけれど、誰とも話さず一人こもりたいときはビジネスホテルに泊まっていた。
そんなとき、祖母と一緒に来たという理由で屈斜路プリンスホテルに宿泊したことがあった。一人旅が多い私にとってその宿泊料は決して安いものではないが、あの高い階から屈斜路湖が見えるロケーションを気に入ってしまい、それからお気に入りの場所になってしまった。弟子屈に行くとなるとどうしても一度は検索してしまうのだ。
温泉からはキレイな星空も見える。なんてすばらしいロケーションなんだと毎度宿泊するたびに思う。
あれから何度泊まってもその気持ちは変わらず今回もここを選んでいた。
同じ場所へ行く楽しみというのはよほど好きではないとわからないかもしれない。
自分が住んでいる地域から簡単に行ける場所であれば、大体の人は想像できるが、飛行機に乗っていく場所となると、どうして何度も同じ場所へ行くの?という気持ちになるらしい。
らしいと言ったのはそんな質問をもう何度も受け取っているからだ。
冬は体も顔も凍るような厳しい寒さだが、それでも外に出ると美しい雪景色を見ることができる。冬の屈斜路湖では美しい白鳥たちにも出会うことができる。
春には春のよさがある。昨年、車を走らせていると遠くに黄色いお花が見えた。あまりにも見かけるので一度止まって見てみるとそれはタンポポだった。
大阪でも咲いている花だけれどこんな広い草原にタンポポが咲くとこんなにも見え方が変わるのかとびっくりした。
夏は寒さが残る6月とすっかり夏らしくなった8月では全然違う。木々や草花たちはこの暑さを待ち構えていたようにぐんぐん成長する。車で走っていると草の背が高すぎて右折しようにもよく見えない。それほどまでに生き生きとしている。
秋は冬にむけての準備が一気にはじまる。大阪ではまだ涼しい時期でも一部では峠が封鎖され通れなくなる。夏に普通に通っていた場所が通れなくなり、観光名所ですら行けなくなったり、遠回りしざるをえなくなる。そしてそれは長い場所だとGW前後まで続く。それほど長い間、北海道の寒さは続くのだ。
こうして何度も違う季節に足を運ぶうちに、この季節に来たらどんな景色に出会うんだろう、どんな感動が待っているんだろう。
そして自分は何を思うんだろうと思うようになった。
こんな風に思うともう暇を見つけて行くしかない。はじめて行ったときは遠く感じた道東も今ではすっかりおなじみの場所になった。
新しい場所を旅する楽しみと同じ場所を旅する楽しみ。
その両方を知るともっと旅は面白くなると思うんだ。
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