いつかワタリガラスに会いたかった。
星野道夫さんのエッセイに度々出てくるワタリガラス。
普通の烏と何が違うのかわからないけれど、星野さんの優しい語りかけに、神話に出てくるワタリガラスにいつか実物を見てみたいと思ったのだ。
一人旅では一泊を普通のホテルで過ごし、もう一泊をとほ宿にすることが多い。
宿の方やその日のお客さんと夜な夜な旅の話をするのは楽しかったし、住む場所も年齢も違う人達が偶然にその場所に集まるというのは毎度興味深かった。
この日は私以外の方々がお孫さんがいるというパワフルな方々で、とてもおじいちゃん、おばあちゃんと呼ばれているようには見えないような若々しい方々だった。
そんな好きなことをするパワーで溢れている方々との会話はおもしろい。
翌日の目的地はみんな決まっていて、出会いたい動物たちも決まっていた。
私はカヌーとスノーシューの予約をしていたが、特段何か見たいものがあるわけではなかった。そんな中好奇心旺盛な人々が集まると自分が目的としているものでなくとも面白い話にはみんながみんな乗ってくれる。
宿の方が何かの拍子にふと星野さんの話を出した途端、わたしは思わずわああととても嬉しい気持ちになり、思わず、好きですと言わずにいられなくなった。
そんなとき、ワタリガラスはこのあたりでも見られるよ、と言われたのだ。
道東に通いはじめてもう11年も経つのに、ワタリガラスが見れるだなんて知らなかった。特徴を聞くと、尾っぽに違いがあり、鳴き声も独特らしい。いわゆるカーカーという鳴き声ではないらしいのだ。
興味深い話になんにも目的がなかった私も、今回は必ず見てみたい、そんな風に思いながら眠りについた。
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