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執筆者の写真Ayako

あてのない旅 中編


感覚を当てにするのは思いのほか難しい。

そう知ったのは、三重にいると気づいたときだ。


田舎が延々と続いている。 このとき、家を出発してから4時間近くが経っていた。

さすがにどこにいるのか心配になり思わず検索すると三重県にいた。

三重県。 たしか、さっきまで京都にいたんじゃなかったっけ…

こんなに簡単に三重にくるなんて思いもしなかった。

ふと、ちゃんと帰れるか心配になる。 自分が今乗っている電車は2両編成。おそらく電車の本数も少ないだろう。 ICカードはとっくに使えなくなっていた。

停車駅はどこもかしこも無人駅。

窓から見る限り、ほとんどの駅のまわりにお店がない。自動販売機ですらなさそうだ。

またもや不安がおそってきた。

帰りのことしか考えられなくなった。

結局、まだ途中にも関わらず帰り道を検索した。

すると、草津が出てきた。

草津と言えば学生時代に仲良くなった友達の地元だ。 彼女とはもう疎遠になりどうしているのかわからないが、「草津は田舎だよ。」とあまりにも言うのでとても印象に残っていた。

草津からだったら家まで最短で帰れる。

それならとにかく草津まで行こう。

今思えばわざわざ作った七ヶ条に反しているが、そんなことはとっくに忘れていた。

ところが安心した途端知っている地名が見えた。

『伊賀』

伊賀ってあの忍者の町かな?

草津に行くと決めたものの、この辺りも面白そうな気がしてきた。


結局、乗り換えるために柘植駅で下車した。

不安もありあんなに張り切って乗車券代を用意していたのに、乗り換えであれば草津駅で払ってくださいとあっさり下車することになった。



発車までに時間があったので駅をぐるっと回ってみる。わずか5分で全部見れるような駅だが、忍者があちこちにいて面白かった。

自動販売機で甘いストレートティーを買い再び列車に乗る。 ゴールデンウィークとは思えない人気のない列車は草津へ向けて出発した。




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