扉を開けると昔ながらのお座敷が見えた。視線を先にうつすと、庭園もある。
広島・宮島にあるカフェ「遊鹿里茶屋」。
一見すると、観光地であればどこでもありそうな古民家風のカフェ。 座敷に腰をおろし、花瓶に目をやると野の花が飾られていた。
庭園にはおばあさんの姿があり、どんどん山を登っていくと、いつの間にか見えなくなった。
いつもは注文しないぜんざいを注文する。栗と聞くと、なぜだか甘くてあったかい気持ちになり、思わず選んでしまった。日常であれば選ばないものを旅の途中選んでしまうのはなぜだろう。
ふと横に目をやると大きな花瓶に赤い実がついた枝が飾られている。 静けさの中に凛とした美しさが光って見えた。
こうして何気なく座っているだけでいつの間にか不思議な感覚につつまれる。 和室、和柄の花瓶に野のお花たち。 山から軽やかに帰ってきたおばあさん。
そのどれもがそれほど特別ではないはずなのに 一切の余計なものがないからか非日常を味わっているようなそんな感覚に包まれた。
どこかに逃避したい気持ちは日々沸き上がるけれど 一見どこにでもありそうな景色が非日常に変化するきっかけは、本当は些細なものなのだと気が付いた。