世界遺産と聞くとなぜだかわくわくする。「世界遺産」と名の付くものだけが、素晴らしいわけではない事を知っていても、根本的に大勢の人がその場所をもしくはそのものを、ときには文化を長く守っていきたい。
そんな気持ちが反映されていると思うから惹かれるのだろう。
ミーハーな気持ちももちろんあるけれど、それだけが理由ではないことくらい、一度でも行った人ならわかるはずだ。
首都バレッタはやはりマルタを象徴する場所だった。
国全体もそうだし、建物はほとんどがはちみつ色。飛行機の機内からもそれがわかったようにとても特徴的な色をしている。
砂漠が多い中東でも同じような色は見かけたが、やっぱり少し違う。このわずかな違いを表現するのは難しいが、「似ているけれど違う」という感覚は、日常においても後々大事になってくることが多い。
バレッタはもっとたくさん時間を取りたかったのに全然取れなかった。
理由は、後回しにしすぎたからという単純なもの。
他に時間がかかりすぎて、魅力的な場所がありすぎて。
バスに乗る度にバレッタを通っていたから、必ず時間が取れると思い込んでいたのだ。
けれどそんなわずかな時間で周れるほど、バレッタは意外と狭くもなかったし、急いて周るような場所でもなかった。要するに魅力的だったのだ。
よく見かける路地はやっぱり絵になる。
度々耳にしたマルタに住む猫たちはあまり見かけなかったけど、普段は気にならないのに多いと聞いただけで探してしまうのはどうしてだろう。
「なんだかうまく言えないけど、かわいい!」
上を見上げると可愛らしい看板や標識、窓辺に飾れたお花や窓枠まですべてが町を作る要素になっている。
警官もゆっくりお喋りを楽しむほど、とても温かくゆったりとした時間が流れるマルタ。その雰囲気はこのバレッタでも感じられた。EUとはいえ物価もそれほど高くなく、お土産もお手頃でかわいいものが手に入った。
首都が面白いとは限らないし、ここ最近首都が一番危ないと言われているような場所ばかり旅していたからか、このバレッタの平穏な雰囲気は世界遺産云々に関係なく、何から何まで魅力的に感じた。