前回シチリアよりもマルタのほうが面白かったという話をしたが、よかったことに変わりはないので今回もシチリアについて書こうと思う。
私たちが今回周ったのはタオルミーナとエトナ山だった。前回書いた通り、シチリアは世界遺産がたくさんあるし、島自体も大きいのでしっかりと周りたい場合はシチリアに泊まるのが一番だと思う。
シチリアはわたしが想像していたよりも素朴で、イメージの中のシチリアはごく一部の世界なんじゃないかと思う。 旅をするたびにイメージと違う場所が出てくるのはどうしてだろうと思っていたが、それは単純にわたしたちが目にする情報はほんの一部でしかなく、全てではないというただそれだけのこと。






以前、大阪のガイドブックを読んだことがある。 食べ物屋さんをメインに書かれていてとても驚いたものだ。そして読んでみると知らないお店がたくさん。けれどこれを見てくる人も多いだろうからこうしてイメージというのは出来上がってくるんだろうと思った。
シチリアも同じで帰国後たまたまテレビで見かけたのだが、やはり素朴な風景をうつしている番組はあまりなく、ほとんどは観光地の明るく陽気で美しい町並みばかりだった。そもそも美しさの定義はそれぞれだろうから表現が難しいけれど、いわゆる旅行者がよく訪れる場所はやはり整備されているし、ある一定の独特な世界観があると思う。

ここまで書いておいてなんだけれど、とは言えその世界観が完成された世界がタオルミーナで、まさに憧れの町といわんばかりの場所だった。
まず、目に留まったアイスクリーム屋さんに入る。はじめてのイタリア語はとても新鮮だったが、ありがとうがスペイン語に似ていて南米を思い出した。 アイスクリームの名前もイタリア語で、何味を選んだのかわからなかったのが何とも言えない思い出だけれど、少し心配しつつも食べてみると、とても美味しかった。



タオルミーナは歩けば歩くほどかわいい町でそこら中にシチリア感が漂っている。
ちょっとした路地に売られているレモンも絵画も、少し見上げると見える窓際のお花もサボテンも、お店の前にかかってある装飾でさえすべてがシチリア感たっぷり。演出なのか観光客向けのレンタルなのか、時折見るクラシックカーや歩いている人達でさえすべてが映画の中のようだった。









初のヨーロッパだから余計にそんな風にうつったのかもしれないが、とにかくキュートで全部持って帰りたいくらいだった。
しばらく歩き、広場のようなところに出るとそこには真っ白な教会。 色とりどりの花が美しく咲き、そこからは地中海が見える。遠くの海でははじまったばかりであろうシチリアの夏を楽しむ人たちが大勢おり、ここにはきっと世界中から休暇に訪れるんだろうと思った。
一言で言うとかわいい世界。 歩いているだけで映画の主人公になれる、そんな場所だった。





遠くにはその後訪れたエトナ山が見えたが、日本人にとっての富士山的な存在なのだろうか? とても大きな山なので、タオルミーナに向かっている途中もエトナ山は見えていた。 最近思うことだけれど、日本に富士山があるように何かシンボルのような存在というのは人に安心を与える気がする。

そこに「必ずある」ということがどれだけの安心感を日ごろ人に与えているんだろう。 当たり前というものがどれだけ幸せなことか、特に最近はよく感じることがある。 エトナ山はシチリアに着き、バスに乗っているときも常にというくらい見えていた。旅をするときは何か目印のようなものを見つけ、それを頼りにすることが多々あるが、エトナ山はなんとなく日本人から見る富士山のようなそんな存在のように見えた。 現地の方に聞いたわけではないけれど、初めて訪れたシチリアでそんな風に感じたわたしの気持ちはそれほど外れてはいないだろう。
わずか2時間ほどの滞在でシチリアの夏を感じ、わたしたちは次の目的地、エトナ山へ向かった。