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執筆者の写真Ayako

北大西洋シーサイドライン


夏に北海道へ行くと何台ものバイクとすれ違う。 何度かとほ宿に泊まった際もわたしだけが車で、他の人はみんなバイクだった、なんてこともあった。 話を聞くとほとんどの人が若いときからバイクが好きで、他にも色々周ったが結局北海道で走りたくなりここへ何度も来てしまうと言っていた。


もしわたしにもう少し勇気があったらバイクに乗っていたと思う。フェリーで苫小牧へ入り、北海道を周りながらキャンプをする。夜はわざわざホテルの部屋から出るなんてことをせずにキャンプ場から見る。想像しただけで素晴らしい景色が広がっている。

数年前、相部屋になった女性ライダー二人はキャンプやホテルで泊まりながら北海道を周っていると言っていた。30歳を過ぎてから乗り出したという方もいたから、わたしもそんな風になるのだろうかと思っていたが、今のところその勇気はまだ出ていない。

両親はわたしが何をしても反対をすることはなかった。基本的に何かすると決めたら言うという習慣がいつの間にかできていた。けれど一つだけ興味を持つ前から禁止されていたことがバイクに乗ることだった。父からは聞いたことはないけれど母はバイクにだけは絶対に乗らないでほしいと言った。母からそんな言葉を聞くことがなかったので、これだけは守らないとと無意識に思っていたところはあるかもしれない。

けれど数年前、どうしてそう思ったのかまったくわからないが、もう大人だし自分で乗りたいなら乗ってもいいよと言った。特に何かを言ったわけでもないのに突然にだ。

おそらく母はもしわたしが乗りたいと言っていたらいいよと言っただろう。度々いつか…と話していたからそう思っていたに違いない。けれどそう言われてもなお乗る勇気は出ないし、これからもない気さえする。そんな今では一生の夢で終わることも一つくらいあってもいいんじゃないかとさえ思っている。

どうしてそんなにも北海道をバイクで走ってみたいと思うかというと道が美しいからだ。

まっすぐな道は何本あるのだろう。

天へと続く道はその名がついている道もあるが、今まで何度も空まで続いている道を見てきた。 右は山、左は海。 前をみれば海に飛び込むと錯覚するような坂道。

山を切っているからか右も左も林で動物が出てくることも度々ある。

季節が違えば景色が変わる。

牧草地ですら違う景色が広がっている。

車で走るたびに、ここをバイクで走ったらどんなに気持ちがいいだろうと思った。




北大西洋シーサイドライン※1は以前走ったときも爽快な気分だった。当時は根室からだったから今回は反対の釧路から行く。記憶の通り気持ちがいいのに違いはないが今回は厚岸で見えた海が美しく、思わず足を止めてしまった。駐車場にはやはり二台のバイクが停まっており、なにやら打ち合わせをしている。バイクだったらまだかなり寒いはずだ。

本当にバイクが好きなんだろうなあ。

わたしは車だけれどなんだか親近感が湧いた。




牧草地、海、山、たまにある住宅地。走っていても全然飽きないのは、コロコロと周りが変わっていくからだろう。大阪で運転していてもほとんどビルや建物だが、ここではそれを見る方が少ない。

北海道を旅するというと、たいていご飯が美味しいよねとか、札幌周辺のこととか、冬だったらスキーとか有名な湖や動物園とか。 もちろんそれも面白いけれど、何にも計画せずひたすら車で走る旅をしてほしい。 そうすればきっと、どれだけ私が力説しようともわからない景色に出会えるはずだから。

※1 北大西洋シーサイドライン 十勝の広尾町から根室市の納沙布岬までの321kmにもおよぶ海岸線の総称。


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