“いい旅だったんですね。その表情で伝わってきます。”
南米最終日のリマで日本人ご夫婦に言われた言葉だ。
ウユニ以来だったから、日本人に会うのも、日本語を話したのもとても久々に感じた。ご夫婦で来られていたようだが、長いフライトの疲れなど一切感じさせない雰囲気で、これからペルーを楽しむんですというわくわく感が伝わってきてわたしまで嬉しくなった。
立ち話程度だけれど、お互いの話をした。毎年どこかへ旅をしているというとても素敵なご夫婦から嬉しい言葉をいただき、なんとも言えない幸せな気持ちになった。
リマはもともと観光へ行くのを迷うくらいそれほど興味を持たなかった場所だ。けれど、リマへ向かっている途中海が見えた途端、一瞬にしてやはり最後に来てよかったという思いになった。加えてリマのタクシーは危ないからと現地在住の人から聞いていたが、日系三世だという運転手さんとの会話も弾み、南米最終日はとても素晴らしい一日となった。
リマではショッピングモールであるラルコマールだけ訪れた。もっと他にも見どころはあったが、近くに海があるこのロケーションがわたしの南米最終日にぴったりだと思えた。
ランチを食べるために海が見えるお店に入った。注文したのはキヌアエアポート。いわゆるオムライスのごはんの部分をキヌアに変えたもので、親しんだキヌアを食べるのもこれが最後かと少し寂しくなった。南米では食事に困ることが多かったわたしもここでは美味しくいただいた。今ではスーパーフードと呼ばれ日本でも簡単に買えるキヌア。けれど、ここでのキヌアは身近にある当たり前の食材だ。そんな身近にあるものを最後に食べられたことをとても嬉しく思った。
何をしていても気が散るというのはこういうことを言うのか、とても名残惜しくて、名残惜しくて。いっぱいしたいことはあるはずなのに何をしていいのかわからない。ラルコマールを一周したあと、なんとなく書けていない日記を書こうとカフェに入ると、結局その居心地の良さにドリンクを追加で注文するほど長居してしまった。
少しくすんだ青空が夕焼け色に染まり出したころ、誰からともなくサンセットが見える方へ集まりだした。空を見るとパラシュートを楽しむ人がおり、あんなところからこの絶景が見えるなんてとても素晴らしい時間だろうなと思った。下のほうでは車が延々と渋滞しており、こんな黄金色の空を車中から眺められるなんて、多少渋滞するくらいがちょうどいいのではとさえ思った。
最後にあれほどのサンセットが見れるとは。
ショッピングをするわけでもないのに訪れたラルコマール。サンセットが見える場所とは知らなかったから予想外の嬉しい出来事だった。
この1ヶ月の間、たくさんの絶景を見てきたけれど、最後に最高の思い出をもらえた気がした。わたしの南米の出発地であり、最終地であるペルー。そしてそんな場所で素敵な日本人と素晴らしい空に出会えた。これ以上ない旅の最終日だった。