旅先では必ずと言っていいほど何度も訪れる場所がある。気に入ったカフェは滞在中何度か行くし、気に入った道があればそこばかり通ってしまう。
イースター島では初日にたどり着いた場所がそんな私のお気に入りスポットになった。不思議なもので何時間も同じ場所にいても、何度行っても気に入った場所というのは全然飽きないものだ。そして、そういった場所があとあとよく思い出すことも経験としてわかっているので、そんな場所を見つけること自体が旅の楽しみにもなっている。けれど実際はそれほど長い期間同じ場所に滞在するということをしたことがないのであまり経験がないのだが、そんなお気に入りスポットで何時間も本を読んだり日記を書いたりして過ごしたいのが本音である。今までの旅では数日の滞在だったので他にも周りたい場所が多く、お気に入りの場所とは言え実際に行った回数は数回であったが、今後旅する中では何度も何度も同じ場所に行くようなそんな経験もしたいと思っている。
前回書いた通り、イースター島初日は最悪の気分だった。けれど一晩ゆっくり眠るとリセットされたのか不思議とそんな思いは消え、ホテルの人に色々と聞いているうちにわくわくが戻ってきた。そもそも旅も後半に差し掛かり単純に疲れていたのだと思う。
前日とはベつの道からメインであるテ・ピト・オテ・ヘヌア通りを抜けると、わたしのお気に入りスポットにたどり着いた。正直言って、見つけた時はこんなに気に入るとは思わなかった。このスポットはそれほど多くはない人々が海で遊んでいたり、遠くでサーフィンする人がいたり、わたしのように散歩する人がいたりと穏やかな雰囲気だった。そんな雰囲気の中、のんびり座りながらぼ~っと過ごしているうちにいつの間にか大好きになっていた。
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波に足をつけるとロングスカートはすぐにびしゃびしゃになったが、かまうことなく一人で遊んだ。後々父に写真を送ると、“イースター島は知っているけれど、あんな遠いところにわたしがいて、自分の目でこの景色を見ているなんてなんて信じられない。”というメールがきた。わたしも同じようにずっと思っていたのに、こうして遠くを眺めながら海に足をつけて過ごしていると、映画『180° South』を見てからずっと憧れていた場所で過ごしていることが夢ではなくなったのだと実感した。ずっと遠くていつ行けるのだろうと思っていた自分がすっかり変わったことにも驚いた。
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ところで、南米に着いてからは野良犬をよく見かけたが、ここチリに着いてからは特に大きな犬が多く、苦手なわたしは正直怖がっていた。けれどそんなわたしの様子に遠慮することもなく、アイスクリームを食べているといつの間にか犬が寄ってくる。わたしからアイスクリームをもらえないことを知ると、去るわけでもなく暑さをしのぐためにベンチの下に潜り込んだ。苦手な犬が自分の座るお尻の下のほうにいると思うと、ベンチの中とは言え少し怖かったが、そんなことを毎日繰り返すうちにその習慣でさえ当たり前になっていた。
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わたしのお気に入りになったこの場所のすぐ隣にはカメのマークが印象的なアイスクリームやさんがある。この場所が気持ちよかったおかげで、めちゃくちゃおいしいわけでもないこのアイスクリームやさんには毎日通った。スタッフによって盛り方が変わる事も次第に慣れ、気にしなくなったが、日本だったら気になることも外国だからという理由だけで許容できる自分が不思議でならない。そんな当たり前を当たり前じゃないと感じる柔らかなマインドを常に持ち合わせられたらよいが、日本ではどうしても頑なになり型にはめたがってしまう自分がいるのはなぜだろう。
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旅に出て、のんびり過ごしていると素の自分にどんどん戻っていく感覚になる。自分の奥底に眠っていた感覚がふっと湧くような、そんな感覚は一瞬で消えていくけれど、本当は気づかないだけで毎瞬毎瞬心の中で起こっているのかもしれない。どうしても頭で考えてしまうけれど、そんなふと沸き起こる感情こそが自分の一番の真意かもしれないね。