ウユニ最終日。この日は大阪でもめったに会うことがない同じ市の出身の方に出会った。地球の裏側で地元の人にしかわからないローカルトークをするなんて、旅立つ前に想像できただろうか?この日はまさに旅人という表現がふさわしい方々と一緒に過ごせたおかげでとても楽しい時間が過ごせた。何より、初日から最終日までたまたまとは言えずっと同じツアーだった三人の方々と気さくに話せたことも、とても思い出深く残っている。人との縁の不思議を、奥深さをあらためて知った。
ずっとずっともう何年もの間、人や物、そして旅は縁だと思っていた。なぜかふと旅をしたくなった場所や一度行ってから何度も訪れるようになった場所。特別何かあったわけじゃないのに、何かのきっかけで出会う人たち。わたしにこのことを伝えるためにやってきたの?と思うばかりに、必要なときに必要な人や物に出会ってきた気がする。場所も縁だと思っていたけれど南米はなかなか来られなくて、ご縁なんて言っている場合じゃないと馬鹿らしくなった時もあった。けれどずっと大好きな言葉、『一期一会』という言葉もあるようにその一回の出会いがどれだけ自分に影響を与えてくれたかわたしには計り知れない。これはわたしの解釈だけれど、たとえ何度も会っている大切な人でも、ベストなタイミングでなければ、どれだけ素晴らしいことを言われたとしても何も響かないだろう。特にこの旅に出たときのわたしは30歳で仕事もプライベートも色々と感じていたときだった。どんな出会いも貴重だけれど特に年上の方との出会いに今まで影響を受けてきたから、仕事をしているだけでは、自分の慣れ親しんだ仲だけでは得られない方たちとの出会いはとても貴重に感じた。人は何歳になってもやっぱりやりたいことはあって、それに向かい自分ができることを積み重ねていけば、できるタイミングは必ずやってくるのだと、この旅で出会った人たちからはそんなことを教わった気がした。余裕がないと反論してしまうことがしょっちゅうあるわたしだけれど、それでも何かひっかかるものがあるとき、きっとこれが今のわたしにとっては大切なことなんだろうと思ったりする。そんな風にいちいち一個ずつ考えていたらきりがないし、深く考えすぎて疲れるときもあるけれど、今回のウユニは本当にそんな風に感じることが多かった。人の話を聞き、自分の思いを話す。インプットとアウトプットの繰り返しで“こんな考え方もあるんだ。”“わたしはこんなことを思っていたんだ。”という気づきが広がる。これはきっと誰とでも得られる感覚ではないだろうし、そんなコミュニケーションを取れる人との時間を普段のわたしたちはどれだけ持っているだろう。出会いとは本当に不思議なものだ。
ウユニを旅立つ日、ホテルで一通りの準備を終えると、列車の時間までゆっくり過ごしていた。そんなときホテルの方にいつ出発するの?と話しかけられた。その方はこのホテルで唯一英語が話せる方だった。夜行列車に乗る予定だったわたしは駅構内のホテルに泊まったのだが、今夜出発することを説明すると少しうなづいただけで去っていった。あと30分ほどしたら出発だなと思っていると、その彼からコカ茶をもらった。カプセルホテルのような、スーツケースを広げることも難しい小さなホテルに泊まっていたので、まさかそんなお茶が出てくるなんて思いもしなかった。何より、その彼はとても控え目な人だったから、なおさらびっくりした。コパカバーナでボリビア人の印象は控え目な、やさしい笑い方をする人たちだと思っていたけれど、まさにそのままの印象が彼にはあった。そんな彼に何気なく差し出されたコカ茶がウユニ最後の思い出の味になった。ペルーで初めて飲んだコカ茶は独特な味がしたけれど、不思議とこのときのコカ茶は甘く、おいしく感じた。その彼は荷物も駅まで運んでくれ、ウユニで最後に交わした挨拶はとても温かいものになった。
泊まる場所や次へ向かう場所、行く方法も時間帯もすべて自分で選んでいる中、誰かと出会うことは自分で設定しているわけではないのに、考えもしないような素晴らしい人にたくさん出会ったウユニ。結局ウユニの絶景はもちろん素晴らしかったけれど、このとき知り合った人たちとの出会いが一番印象強く残った。次に来るなら大好きな誰かと一緒に来て、このときわたしが感じた気持ちをシェアできたらと思う。今まで海外に出て日本人が多い場所に行くと外国に来た感じがしなくて嫌になることがあったが、自分の慣れ親しんだ言葉を話すことがこれほど居心地の良いものだとは気が付かなかった。この旅に出てから何度も日本人なんだなと感じてきたが、ウユニに来て自分の中にあるアイデンティみたいなものがとてもはっきりした気がした。日本人だったら当たり前なことである日本の文化や習慣なんて普段は何も思わないけれど、そういった背景が同じというだけで安心するというのは外国で長く過ごさないとわからないことではないか。もちろんそういったものが逆に嫌になる人もいるだろうけど、この時のわたしは安心感でいっぱいだった。
そんな、色んな思いに気づいたウユニでの滞在はわずか4泊5日だったけれど、見たい景色が見れ、素晴らしい人との出会いにあふれた最高の時間が過ごせた。“いつかまたきっと戻ってくるよ。”と、心の中で唱えながら、次の目的地へ向かうため、夜行列車に乗り込んだ。